2011年8月11日木曜日

陸前高田 その10

佐藤さんは仰いました。
「いろんな方が私に津波がきた瞬間のことをお尋ねになります。でも私が覚えているのは本当にわずかなことだけです。大地震がきて、これはまずい、はやくあの集落にいる年寄りを助けなければってことです。大津波警報が出されて、とにかくこの場所に急いで勤め先からもどってきました。歩けば3歩で疲れてしまう心臓の悪い年寄りを高台に押し上げるように避難をさせて、やっと安全な場所に避難させられたと息をついた瞬間、津波がすべてを押し流していきました。それしか覚えていないんです。でもあとあと考えてみると、私がいまここにいて皆さんにこんなことをお話できるのも、きっと私はあの時、年寄りを助けたから助けられたんじゃないかってことです。つまりはだれかを助ければ、だれかに助けられるっていうことです。皆さんは今日、私たちを助けに来てくれました。だからきっと将来だれかに助けられるはずです。ありがとうございました!」